つまり、炭素排出量の多い企業では、実際の炭素排出量よりも良い値に見える可能性があるのです。したがって、炭素排出量の推定値が普及する方が企業にとっての利益となり、実際の炭素排出量報告を思いとどまらせることになってしまいます。
自身も執筆に関わったハンドブックで、Hoepner氏は「国連の予防原則(1992年)に基づいた企業GHGデータ推定値の算出推奨する。迷ったら企業側でなく地球側を配慮することだ。予防原則を適用することで、企業のGHGデータが過小評価されることを防ぎ、その結果、企業がGHG排出量報告を開始または強化する意欲が生まれることになる」と述べています。
炭素排出量の推定値によって、インプット(エネルギーや資源の投入量)、排出方法、アウトプット(二酸化炭素と廃棄物排出量)だけでなく、企業の規模や所在地など、ふさわしい炭素プロファイルが構築されます。その後、推定モデルは似たような業務を行っている企業に対し、各推定値の確率分布に異なるパーセンタイルを提供することになります。商品にPABのような予防原則を適用するためには炭素排出量は過大評価されるべきで、75パーセンタイルから最大99パーセンタイルまでを目指すのが理想です。そうすることでバイアスを防ぎ、企業が実際の炭素排出量を開示することを促進します。