規制の必要性
市場には、サステナブルデットの発行に当たって発行体が従うべき条件を定めた法的な枠組みがまだありません。これまで各組織は、ICMAの「グリーンボンド原則」と「ソーシャルボンド原則」、あるいは英国のローン・マーケット・アソシエーション(LMA)の「グリーンローン原則」といった業界団体が発行した自主的なガイドラインに従っていました。これらで示された手順は、サステナブルデット市場の標準化と透明性の向上に貢献しています。しかし、対象となる環境・社会関連のプロジェクトや活動が極めて広範にわたるため、実施にあたっては解釈の余地があります。
欧州連合(EU)は21年7月初旬にグリーンボンド基準の第一次草案を発表しました。EUは、これをグリーンボンドの自主的な「絶対的基準」とすることを意図しており、EU加盟国・非加盟国どちらの発行体もこの基準を利用できるようになります。しかし発行体が自らの債券を「欧州グリーンボンド」、すなわち欧州グリーンボンド基準(EUGBS)適格債と称するには、この欧州の基準に従う必要が生じます。EUGBSは、ICMAがグリーンボンド原則で示した従来の柱をベースにしていますが、債券で調達した資金はEUタクソノミーに沿った経済活動に投資されなければならないという点が追加されています。一方、英国は最近、独自のタクソノミーを策定し、EUと同様の基準を開発することを目的に、専門家グループを任命しました。
このように実効性のある規制を打ち出し、環境配慮を装う「グリーンウォッシュ」を防止するために細心の注意が払われていますが、これは、ESG & サステナブルファイナンスを定量化するだけでなく、急速に成長するこの分野を管理し、この分野に対する関心を最大限に高めるための大きな取り組みの一部にすぎません。